収穫した米から一番外側のもみ殻だけを取り除いた状態の米を、玄米と言います。
白米は精米することで、ぬか層や胚芽が除かれますが、これらの部分が残されているのが玄米です。
ぬか層や胚芽には食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富に含まれており、これらの栄養素を豊富に含む玄米は、妊活中におすすめの食材です。
今回は玄米に含まれる栄養素の解説をはじめ、デメリット、相性の良い食材や玄米を使ったレシピなどをご紹介します。
ぜひ妊活中の食事の参考にして下さい。
玄米に含まれる栄養素
穀類である玄米の主成分は炭水化物です。
そして、ぬか層や胚芽が残されている玄米には食物繊維やビタミン、ミネラルも豊富に含まれています。
ここでは、玄米に含まれる栄養素の中から妊活中に有効な働きをする、炭水化物、食物繊維、ビタミンB群について解説します。
血糖値が上がりにくい炭水化物
玄米の主成分である炭水化物は、体の大切なエネルギー源であり、健康維持に欠かせません。
脳の大事な栄養素なので不足すると、脳の働きが低下し、集中力がなくなったり、イライラの原因になります。
しかし、炭水化物は食べ過ぎると肥満の原因になることも事実です。
ここで、注目したいのが、GI(グリセミック・インデックス)値です。
GI値とは血糖値の上がりやすさを数値化したもので、ブドウ糖を100とし、血糖値が上がりやすい食材ほど数値が高く、血糖値が上がりにくい食材は数値が低くなります。
血糖値が上がりやすいということは、すなわち血糖値の乱れにつながります。
血糖値の乱れは、体や精神面の不調の原因となるので、妊活中は避けたい要素です。
そして、妊娠しやすい体づくりには血糖値を安定させることが大切になります。
玄米のGI値は56と、穀類の中では低く(白米のGI値は84)、血糖値の上昇は緩やかなので、妊活中の方の主食としておすすめの食材です。
腸内環境を整える食物繊維
玄米独特のゴソゴソ、パサパサとした食感はぬか層に含まれる果皮や種皮によるものです。
この果皮や種皮に食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維には便秘を予防して、腸内の健康を保つ働きがあります。
腸内の健康を保つことは妊活していく上でとても大切です。
なぜなら、せっかく妊活に効果的な栄養バランスのよい食事を摂っていても、腸内環境が悪ければ、栄養素がうまく消化吸収されず、無駄になってしまうからです。
また、赤ちゃんはお母さんの腸内細菌を受け継いで生まれてきます。
と言うのは、出産の時にお腹の赤ちゃんはお母さんの産道を通りますが、その際に産道の細菌を飲み込むことでお母さんの腸内細菌が赤ちゃんに移行するのです。
したがって、妊娠する前の妊活中から、腸内環境を整えておくことはとても大切です。
玄米に含まれる食物繊維はヘミセルロースと呼ばれ、便を増やしたり、腸内を刺激して排便を促してくれます。
抗ストレスビタミン・パントテン酸を含むビタミンB群
玄米の胚芽にはビタミンB群が豊富に含まれています。
ビタミンB群にはビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチンの8種類があります。
これらのビタミンは体内でそれぞれ重要な働きをしますが、お互いに影響して働きを高めます。
ビタミンB群の一つであるパントテン酸は「抗ストレスビタミン」とも呼ばれ、ストレスが生じるとフル稼働する副腎皮質ホルモンの合成に関わっています。
妊娠に関わる性ホルモンは、ストレスの影響を受けやすく、月経不順や精神不安にもつながります。
ストレスを和らげてくれるパントテン酸の働きは、ストレスに負けない体づくりに役立ち、妊活をしていく上でとても大切です。
玄米の消化の悪さをカバーする「発芽玄米」
血糖値が上がりにくく、食物繊維やビタミン群を豊富に含む玄米ですが、果皮や種皮などのぬか層が残っている分、消化が悪いというデメリットがあります。
そこでおすすめしたいのが「発芽玄米」です。
発芽玄米とは、玄米を1㎜程発芽させた玄米です。
発芽させることによって、酵素が活性化し、香り・旨味が増え、消化性も向上します。
また、果皮や種皮が柔らかくなるので、白米と同様に手軽に炊飯できます。
さらに、発芽によってアミノ酸の一種であるGABA(ギャバ)の量が、玄米の3倍、白米の10倍に増加します。
GABAには抗ストレス作用があり、ストレスにより発生する活性酸素から体を守ってくれるので、卵子の老化予防にも効果的です。
一緒に食べたい相性の食材
玄米と一緒に食べたい相性の良い食材をご紹介します。
良質なたんぱく質源である大豆と合わせて食べよう
大豆には健康な母体づくりの基本となる、良質なたんぱく質が豊富に含まれています。
炭水化物やビタミン、ミネラルが豊富な玄米に大豆の良質なたんぱく質が加わることで、玄米の栄養が補われ、栄養価が格段に上がります。
また、大豆に含まれるイソフラボンは強い抗酸化作用を持つと同時に、女性ホルモンに近い働きをするので、女性ホルモンのバランスが保たれ、妊娠体質へとつながります。
さらに、ホクホクとした大豆の食感は玄米独特の食べにくさを緩和してくれます。
玄米のおすすめレシピ
玄米のおすすめレシピを2つご紹介します。
ここでは、玄米の消化の悪さをカバーしてくれ、なおかつ扱いやすい発芽玄米を使っています。
ぜひお試し下さい。
玄米黒米大豆ご飯(圧力鍋使用)
玄米と相性の良い大豆を使ったレシピです。
圧力鍋は熱と圧力を使って米を芯まで柔らかくしてくれるので、浸水する必要がありません。
また、玄米の一種である黒米のぬか層には黒紫色の色素アントシアニンが含まれます。
このアントシアニンは強い抗酸化作用を持っており、卵子の老化予防に効果的です。
◇材料(作りやすい分量、茶碗約6膳分)
- 白米…1カップ
- 発芽玄米…1カップ
- 大豆水煮…1袋(195g)
- 塩…小さじ1/2
- 酒…小さじ1
- 水…2+1/4カップ(450㏄)
◇作り方
- 白米を研ぎ、発芽玄米、黒米と共に圧力鍋に入れ、大豆水煮、塩、酒、水を加えて、火にかける。
- 圧がかかったら、弱火で5分加熱した後、火を止め、圧が抜けるまで自然放置する。さらに15分程蒸らし、完成。
圧力鍋の使い方はメーカーによって異なります。仕様書をよく読んで、加圧時間などを調整して下さい。
◇栄養成分(1人分)
- エネルギー 255kcal
- たんぱく質 7.9g
- 炭水化物 47.1g
- 食物繊維 3.3g
- ビタミンB群(ビタミンB1 0.13㎎/ビタミンB2 0.02㎎/ナイアシン 13.0㎎/ビタミンB6 0.14mg/ビタミンB12 0.0ug/葉酸 13ug/パントテン酸 0.43mg)
玄米豆乳リゾット
玄米と相性の良い大豆からできた、豆乳を使ったレシピです。
大豆製品である豆乳と鶏胸肉はどちらも良質なたんぱく質源です。
良質なたんぱく質を摂ることで、筋肉が増え、血流量が増し、血行が良くなります。
温かいリゾットも体を芯から温めてくれます。
玄米豆乳リゾットは妊活の大敵である冷えを予防・改善してくれる、妊活におすすめの一品です。
◇材料(2人分)
- 発芽玄米…1カップ
- 水…1カップ
- コンソメ…1個
- 豆乳…1.5カップ
- キャベツ…1枚(100g)
- 鶏胸肉…80g
- 粉チーズ…小さじ2
- 塩、こしょう…少量
◇作り方
- 発芽玄米は分量外の水で30分~1時間程度浸水させる。
- キャベツと鶏胸肉は1~2㎝角に切る。
- 鍋に水気を切った①と水、コンソメを入れ、弱火で煮込む。
- ③の水分が無くなってきたら、豆乳と②を入れて、さらに煮込む。
- 玄米の煮込み時間の目安は30分です。お好みにより加減して下さい。
- お好みの硬さになったら、粉チーズを加え、塩、こしょうで味を整えて、完成。
◇栄養成分(1人分)
- エネルギー 404kcal
- たんぱく質 21.3g
- 炭水化物 73.9g
- 食物繊維 4.0g
- ビタミンB群(B1 0.46㎎/B2 0.12㎎/ナイアシン 13.0㎎/B6 0.68mg/B12 0.1ug/葉酸
- 107ug/パントテン酸 1.89mg)
玄米の保存方法
直射日光を避け、涼しい場所で保存しましょう。冷蔵庫での保存がベストです。
また、米袋のままの保存は玄米が劣化しやすいので、必ず密閉できる袋や容器に移し替えて保存しましょう。
妊活のおすすめ食材「玄米」
玄米の主成分である炭水化物は血糖値が上がりにくく、妊活中の主食に適しています。
また、ぬか層や胚芽が残っている玄米は、食物繊維やビタミンB群など妊活中の方にぜひ積極的に摂っていただきたい栄養素が豊富に含まれています。
炊飯に手間がかかり、食べにくいというイメージがある玄米ですが、発芽玄米を使ったり、白米と混ぜることによって、玄米初心者でも簡単に美味しく食べることが出来ます。
妊娠しやすい体づくりの為に、日々の食事に玄米を取り入れてみてはいかがでしょうか。
執筆監修者:犬飼絵里子(管理栄養士)